集合住宅の空間形式

共同体を要請する空間
 集合住宅の様相が少し変わってきているように思う。デザイナーズマンションと呼ばれたRC造の密集市街地に計画される小規模な集合住宅は、かつての木賃アパートというビルディングタイプに置き換えられたものである。その集合形式は小さな住戸ユニットをプライバシーを守りながら高密に集合させるものである。そのため小さなユニットをつなぐ長い共用廊下が必要となり、分節したユニット間はコンクリートの壁で切断する壁式構造が多用されていた。このような小規模集合住宅はモダニズムの計画原理に基づいている。基本的には個に分解された個人を収容する集合形式であり、住戸のプライバシーを確保することが優先される。それは、コモンと呼ばれる共用廊下からスチールドアを介して住戸内に入るとコンクリートの壁で隣戸と区画され、その内部空間は自己充足し視線は隣戸とは無関係に無限の遠方に向かっている。

「気配の系」へ
 新しく出現している集合形式は、都市生活の中で個が分解され孤立している事に対して、集合して住まう意味を見出そうとするものである。ユニット間に視線の交錯が生まれるものや、かつての長屋のように路地を通して行き来ができるものなどである。これらは「プライバシーの系」から、集まって住まう「気配の系」へという動きがあるようである。その「気配の系」とはお互いの生活の気配を感じられる緩やかなプライバシーの空間構成をとるものである。スチールドアを閉じれば中で何をしていても分からない近隣ではなく、お互いの気遣いや心配りを必要とする空間である。夜、明かりが灯ることで隣家の帰宅がわかったり、外部の近隣にも生活の滲み出しがある。共用廊下という交通のためにだけ用意される空間ではなく相互の生活を補完するような緩い空間構造がある。そこでは住戸は自己充足していない。このような緩やかなプライバシーをつくる道具立ては、かつての自然集落では普通に用意されていたものであった。共同体が存在していた当時の都市では集まって住むと言うことはプライバシーの問題ではなく、気遣いや心配りという作法が大切な要件であったのではないか。しかし、現代の都市ではプライバシーの系を主要な要件として集合形式を組み立ててきた。その集合形式がさらに共同体の意識を希薄にさせてきたのかもしれない。そして今、「気配の系」というような集まって住まうことの意味を考え直す空間が提案されている。それは共同体を要請する空間形式だと言った方が良いのかも知れない。

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