photo by DAICI ANO
Gamagori Gardening Support Center
建築:architecture WORKSHOP/北山恒・工藤徹・江島史華
構造:佐藤淳構造設計事務所
設備:ピロティ
施工:丸七建設興業 タカミハウス工業 小池商事
農業関連の産業施設である。建築の「デザイン」が介在する必要のない施設なので、余剰の予算はない。農業用資材は安価でタフなのでこれまでも建築に転用してきたが、今回は本当の農業施設なので、極限のコストで一体何ができるのかやってみようと思って作業を始めた。
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敷地は既存農地で、そこにある温室などの既設の農業工作物は活用し、さらに近くに所有する流通施設の構築物は移設して再利用する。ということなので、その実測調査を丹念に行った。それは「持ち合わせ」の構築物・工作物を「まだ何かの役に立つ」という原則で集めて吟味することから始まる。何もない更地に計画するのとは異なり、まずはこのような「後ろ向きの行為」から始まる。すでにその場所にあるものはできるだけそのままで利用し、新しく設けるレディーメイドの温室も「もちあわせ」のひとつとして再利用や転用を行う。
2棟だけ新設の温室を建設した他は、既設の温室や、近くの流通施設で使っていた工作物を移設して全体をアッセンブルしている。既設の温室フレームを使って作業空間にする棟は最小限の資材と設備によって生活環境を整えた。将来的には、今回は予算の都合上断念した果樹園や中央通路の延伸を計画している。そして、既存温室、改修温室、移設温室に囲まれる場所に、新設で屋根付き屋外作業場を設けた。大型の車両が入るという条件があったのでまともに計画すると予算を大幅に超えてしまう。そこで小径の木材を組み合わせて大架構をつくることにし、構造家の佐藤淳さんに設計を依頼した。
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スタディ模型をいくつもつくって検討を重ね予算内に納まる架構体にたどり着いた。それは田園風景の中でモニュメントとなり、そこで働く人たちに愛されている。ここで検討された建設行為は「ブリコラージュ」という概念であるが、作品ではないので完成という時間概念がない。場当たり的な出来事に小さな最適解が与えられ、新たな空間構造がその都度現れる。そしてさらに出来事は継続する。再利用や転用という手順はすでに私たちの都市の中に始まり、そこに、これからの建築や都市の手順が開かれている。そしてそれが、豊かな社会をつくるのだ.
(北山恒)
所在地 愛知県蒲郡市
敷地面積 4941m2
施設面積 1805m2
竣工 2020年9月