photo by Tomoyuki Kusunose
tomigaya commons
建築:
architecture WORKSHOP / 北山恒・岡田尚子・工藤徹・諸橋奈緒(基本設計)
ミハデザイン / 光本直人 濱名直子(A E F J住戸)・工藤徹(C住戸)・川畑智宏建築設計事務所+岡田尚子(D・I住戸)・
山下真平建築設計事務所(G・K住戸)・加藤由里恵デザインオフィス(H住戸)
プロデュース:アーキネット
構造:構造計画プラス・ワン
設備:団設備設計事務所(設計)・ピロティ(監理)
施工:木村工業
photo by Tomoyuki Kusunose
photo by Tomoyuki Kusunose
敷地は戦前開発された住宅地と敷地割の小さな密集市街地の境界にある。比較的大きい宅地3軒の共同開発である。不動産開発としてはこの宅地を細分化するミニ開発か、またはマンション事業化が一般的である。そうではなく、集まって住む意味を空間としてつくろうと考えた。それは、自然(じねん)的にうまれる集落(ムラ)のような空間の関係性をつくれないかということである。そのため計画に当たって明確な構造性をつくらず、いくつかのルールや部分的な空間ランゲージを組み合わせてそれを統合するというプロセスをとった。
photo by DAICI ANO
集合型式を共同住宅ではなく長屋で解くことで、ツリー構造ではなく空間的セミラチスに向かう。その作業結果として場当たり的な複雑性をもつ空間構造となることを予想していた。制度上の長屋は既存適合のための現状追認の法制度なので、不思議なゲームルールのような決まりがある。共有する空間はつくれないが、各住戸から2m幅(都安全条例改正前)の避難通路が求められる。そのため路地空間が必然的にうまれる。今回はこの路地空間を躯体の中に巡らせ、それを南側の密集市街地の私道路地に接続することを検討していた。このように経路ネットワークが先行する集合の形式の計画を考えた。
photo by DAICI ANO
さらに、建物をできるだけ南側に寄せ北側にコモン広場をとり、ピロティ状の駐車場をその広場に参加させた。これは「近隣パーティを誘導する外部空間」というランゲージである。そして、この広場に面した住戸はできるだけ透明性を高くして、視線の交錯を生むようにしようとした。
複雑性をもつ集合形式となり、互いに視線が交錯する開口部が生まれる、その位置や大きさを慎重に検討した。視線の交錯は共に住むという感覚を生む重要な空間要素である。コーポラティブハウスなので基本設計終了後に入居者が決まり、その要望は設計サイドの意図とズレが起きたが、それも複数性をつくるノイズとして受け入れた。
このプロジェクトは複数の設計者が参加するチーム設計で行った。この後、組織名をarchitectureWORKSHOPという「小文字の建築と大文字の共同作業場」にnetworkを加えて、全て小文字のawnとすることにした。これからは「複数性の建築」を試行していこうと考えている。 (北山恒)
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所在地 東京都
主要用途 長屋(コーポラティブハウス)
敷地面積 498.05m2
建築面積 262.03m2
延床面積 977.07m2
階数 地下1階 地上3階 塔屋1階
構造 鉄筋コンクリート造
設計期間 2017年1月〜2019年3月
施工期間 2019年3月〜2020年7月
掲載 新建築2021年8月号