photo by DAICI ANO
HYPERMIX
建築:architecture WORKSHOP / 北山恒・工藤徹
構造:構造計画プラス・ワン
設備:ZO設計室
施工:佐藤秀
近代都市計画では都市は機能によって区分される。建物単体においても、建築基準法によって機能の混在は避けられている。さらに、都市に用意される住宅は家族というユニットに対応するものに限られ互いの区画が守られる。都市空間では人々は区分され切り分けられているのだ。共同住宅には働く場所を設けることが法的に禁じられているから、日中はそこには誰も居ない。逆に、オフィスビルは夜間と休日は使われない。人々の生活は時間空間においてシームレスに連続しているにもかかわらず、生活の現場である都市空間では切り刻まれている。
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人々はそんな抑圧を潜在的に抱えているから、それを乗り越える混在モデルはこの社会で支持される可能性がある。住む場所と働く場所を混在させることや、多様な住まい方が出来るようにするということはあたりまえのことに思えるのだが、実現させるためには現行の制度への対応が主題となる。そして、この機能が混在する共用空間は、パブリックな使われ方を支えるインフラとして、なんでもないあたりまえの空間として現れる。
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集団の意思決定は10人くらいのスケールが適しているそうであるが、各フロアそのくらいの人数の居住者で構成している。それを2層連結して選択性のある人間関係をつくっている。混在するオフィスも小規模な人数なので、このコミュニティに参加できており、日常的な生活の場面で親密な光景をみることができる。
そして、この建物にアドレスを持ち、日常的に使うコミュニティスケールは50名前後となるのであるが、エレベータや共用空間で顔を合わせ、次第に顔見知りとなって挨拶する関係が生まれている。柔らかい共同体が生まれる可能性を感じている。
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サポート/インフィルという、1970年代にハブラーケンという建築理論家が提案した概念ある。それは、時間と空間のスケールでハードウエアの階層を特定する考え方で、ティッシュ/サポート/インフィルという階層に分かれる。ティッシュは地域レベルの拡がりに対応するもので、ティッシュに対応する時間は時に生命スパンを超える。サポートは建築レベルの空間だから、時間は生命スパンに対応する。インフィルは生活動作に関わる空間だから対応する時間は短い。このアイデアを持つことで建築のデザインは空間だけでなく時間もデザインすることが可能になる。
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通常不動産商品は竣工時に最大価値を持つことが目されている。建築をサポート/インフィルの塊だとするならば、そのなかでサポートだけを設計すると考えると、短期的な利益から建築を考えないので、長期にわたるハードウエアとしての建物の維持や地域社会での役割から建築の在り方を考えることになる。インフィルは、それがこの空間を使用する人々にとって即時的な最適解であることが求められるので、ブリコラージュのように簡便なものでよい。場合によっては他の人格に委ねることになる。このように考えで、二つの時間を並列することで、最初からリノベーションのように設計することができる。
今回、インフィルに当たる家具や設備機器は別途工事としているので、私たちが関与していないものも多い。建築としてのハードウエアは、利用の変化を受け止めるインフラだと考えている。容積率を大きく残すことや、周囲にバルコニーを廻らす平面構成、中間免振層によってその上下で大きく構造形式を変えることなどは、長期的な視点での事業合理性から判断した。この建築はこのような設計思想でつくられている。
(北山恒)
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所在地 東京都江東区門前仲町
用途
シェアハウス オフィス 共同住宅 カフェ スポーツジム 遊技場
設計担当:北山恒・工藤徹・挾間裕子・諸橋奈緒・友杉明香
設計協力(寄宿舎階):ミハデザイン一級建築士事務所(光本直人・濱名直子)
監理担当:北山恒、工藤徹
敷地面積 654.05m2
建築面積 506.19m2
延床面積 3082.10m2
階数 地下1階 地上9階
構造 RC造 一部S造
設計期間 2013年3月〜2016年1月
施工期間 2016年2月〜2018年1月
掲載
JA112 YEARBOOK2018
近代建築 2019年3月号
JA111 Living Together 集合住宅の先へ 2018/AUTUMN
新建築 2018年8 月号
日経アーキテクチュア 2018/07/26
JIA建築年鑑2018