photo by Takagi Planning Office

Minamirokugo House

南六郷ハウス

建築:architecture WORKSHOP / 北山恒・江島史華・諸橋奈緒

構造:江尻建築構造設計事務所

設備:団設備設計事務所

施工:櫻工舎

 


 

しばらく住むとわかる

大田区南六郷は京急雑色駅前の商店街は賑わっているが,少し離れると町工場や倉庫が点在する準工業地域となり、ところどころ商品化住宅に置き換えられている,しばらくこの街に通っていると,町工場の作業風景や,彼らが通う惣菜屋,地域住民が集まる喫茶店,ランドリー併設の銭湯といった,人々のあたりまえの生活を支える町の様子を知ることになり, 古く雑多なものが集まる情けない風景が,親しみのある場として見えてくるという経験をした.賃貸アパートの企画なので,工事コストは厳しく抑えることが要求される.しかしながら,どこにでもある商品化住宅ではなく,この町に縫い込むような生活をつくることができないだろうか.

photo by Takagi Planning Office

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単純な空間構成で,アクティビティを抱き込むようなおおらかなユニットをつくることを考えた.アパートは小さなユニットが並列する構成となるので壁量が多くオーバーストラクチャーとなる.それを利用して,構造に無理のない程度に階高を高くし,さらに木造アパートは上下階の音が問題となるため2階床を荒床の捨て型枠として135mm厚のコンクリートスラブとした.

1階の中央に2DKのユニットバス付の部屋を設けた(近くに銭湯があるので各室にはシャワーユニットしか設けていない).この部屋は隣室と連結させて3DKとしても貸すことが出来る.さらに,2つの個室のドアは独立した鍵を持ち,それぞれが個室単位の貸室にもなる.鍵のコントロールによって,ダイニングキッチンというコモンの入会権(いりあいけん)を最小で2室、最大で8DKまで拡張できるようにした.
空間の入会権(いりあいけん)を切り替える鍵システムによって,通常の区分されたアパートのようにも使えるし,シェアハウスのようにも使える可変性を用意している.このアパートの使用がはじまれば, コモンの入会権(いりあいけん)が可変するダイニングキッチンが新しい人間の関係性を作り出すのではないかと期待している.何でもない木賃アパートが,しばらく住んでいるうちに家族や友人という名前の付いた人間の関係性の認識を変えることができないかと考えている.

(江島史華)

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所在地  東京都大田区

用途   シェアハウス

 


敷地面積 126.71m2

建築面積 75.86m2

延床面積 151.72m2

階数   地上2階 

構造   木造

 


竣工   2018年11月

 

掲載   新建築 2019年8 月号
     全国賃貸住宅新聞 2019/12/2