photo by DAICI ANO

House in Kamakura

鎌倉のスタジオ付住居

建築:architecture WORKSHOP / 北山恒・加藤光剛

構造:江尻建築構造設計事務所

施工:前川建設

 


 

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住宅を社会化する音楽スタジオ

計画地は、遠くに富士を望む西向きの斜面地。道路からの高低差9mほどで、東側はゴロタ石積みの擁壁の上にうっそうとした雑木林が広がる豊かな外部環境の中にある。地盤の強度とがけ崩れの可能性を想定して、1階を鉄筋コンクリート造、2階を木造の混構造とした。コンクリートはポンプで圧送できるが、木架構は人力であげることができる小断面の材で構成することにした。

 

住まい手はピアニストとバイオリニストである演奏家の夫婦で、日常的に楽器を演奏する生活のために、ピアノとバイオリンのためのふたつのスタジオが必要とされた。二つのスタジオは鉄筋コンクリート壁体で囲われたボックス柱となるような空間構成とし、壁面は角度を調整して不要な音を消すことにした。スタジオは楽器のために常時空調するので自然通風を行わないが、周囲に遮音体としての空気層をつくるために躯体サッシュのガラスで嵌め殺しすることによって、夜間でも大音量が出せる遮音性能を与えている。

 

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一方、2階は週末住居のようにシンプルで、風の抜けるおおらかな空間とした。中央に水回りを配置し、その周囲を回遊できるような空間配置としていたが、計画途中で子どもができたため、パネルで寝室を区画することになった。住居は生活の様態と共に変化する。

 

 

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上階の柔らかな生活の場と比べて、仕事場であるスタジオはパブリックな感覚が求められると考えている。スタジオのある1階は住宅に入る前の土間のような開かれた空間で、小さな室内奏のコンサートも催される。

(北山 恒)

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所在地  神奈川県鎌倉市

用途   住宅 スタジオ

 

敷地面積 377.44m2

建築面積  87.89m2

延床面積 168.92m2

階数   地上2階 

構造   1F:鉄筋コンクリート造   2F:木造

竣工   2008年6月

 

掲載   新建築創刊85周年記念 住宅10年 2010/12臨時増刊
                  新建築住宅特集 2008/11

                 BEYOND LIVE/WORK /FRANCES HOLLISS著 2015
                 美しい住宅インテリアの見本帖/X-Knowledge 2013