photo by DAICI ANO
Framework Y
建築:awn / 江島史華
構造:東京藝術大学/金田充弘+TECTONICA/鈴木芳典 鶴田翔
施工:五十嵐惣一工務店/五十嵐新一
不動産コンサルティング:創造系不動産/山岸亮太
地域固有の地形
横浜の丘陵地に計画した木造の専用住宅である。
台地から川まで続く里山林を切り盛りした集落からはじまったこの地域は、1950年代の開発により急速に宅地化が進み、切り分けられた個々の敷地が周辺地盤との高低差を解消する擁壁を持つ。駅から住宅街に向かうと様々な勾配の曲道が連続し、擁壁の風景が連なる。地形を体感しながら生活が営まれている。
施主、不動産、施工者、設計者が土地探しの段階から参加したプロジェクトであったが、擁壁を持つ敷地は敷地面積と有効宅地面積にギャップが生じるため、不動産評価が抑えられている。選んだ敷地は、法的には南東面が接道した旗竿敷地であるが、北面の17mの間口いっぱいに高さ2~3mの擁壁を介して道路に面する敷地である。北側道路の反対側には小学校、更に奥には免許センターと、川に向かって次々に5m程度のひな壇状に下がった地形となっている。地域固有の地形をダイレクトに感じ取ることができる敷地を魅力的に感じた。
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photo by Yuta Tanaka
敷地特性から立ち上がる架構/街に対する構え
住宅としての機能や要望を落とし込む前に、敷地特性から呼び起される軸組の検討からはじめた。建蔽率などの法条件をクリアしつつ構造やコスト、施工に対して合理性を持ち、身体スケールに応答する架構として、敷地いっぱいに1.5間(2730)モジュールの木架構を探し出した。
この架構は隣地境界の形状に従って切断されるが、その不整形な外壁面を耐力壁として固めることで、内部空間は間仕切り壁から解放され架構が浮かび上がる。グリッドに倣いながら建具や家具で空間をしつらえることで、住人の生活様式や家族形態の変化に柔軟に対応できる可変性を用意している。
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擁壁から道路境界線まで大きくはね出した木架構は、道路からは軒下空間のように、リビングからは室内の延長のように感じられる。それは、街と住宅との厚みのある境界である。
テラスの先端の可動スクリーン、リビングとテラスの間の引き戸の操作で、外部との関係を調整する。現在は限定的だが、将来的にすべてのスパンにテラスを増築できるよう、連結可能な手摺や下地のディテールを検討している。
1日、1年、数年、数十年の時間軸の中で、街に対する様相は変化し続ける。専用住宅という閉じられた用途でありながら、街と向き合うような構えを作ることが出来ないかと考えた。
(江島史華)
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1F plan
2F plan
section
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所在地 神奈川県横浜市
用途 個人住宅
敷地面積 138.1m2
建築面積 65.56m2
延床面積 107.2m2
階数 地上2階
構造 木造
竣工 2023年12月
掲載 住宅特集2024年3月号
日経アーキテクチュア 2024年4月11日号
渡辺篤史の建もの探訪 2024年10月26日放送