photo by DAICI ANO
Jingumae Void Infrastructure
建築:awn / AWN 北山恒 工藤徹 江島史華 友杉明香 平山龍太郎(監理)
照明:岡安泉照明設計事務所/岡安泉 加藤樹里
植栽:ランドスキップ/溝口達也
構造:構造計画プラス・ワン/早稲倉章悟 長谷川侑香
設備:EOS plus/高橋翔 肥田あゆみ ジーエヌ設備計画/五木田正和
施工:辰/池上康太 伊藤真由子 齋藤歩美
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関連論考:人びとを関係づける都市組織(北山恒)
関係を媒介する組織体としての建築
プランの中心にヴォイドを抱え込むオーナー住戸付きの集合住宅である。敷地は旧渋谷川遊歩道から少し奥に入ったところに位置し、南北両方に接道がある。二つの道路の高低差は5mほどあり、もともとは切り立つ擁壁が通行する人を拒絶するような状態であった。この擁壁を新たに工作物として作り直して中央に開口を開け、敷地を南北に貫通するヴォイドの入口を設けた。
周辺にあわせて不整形な敷地形状を許容する外形としながら、明確なヴォイドとして切り取られる中心の路地に人の流れや複数の視線を呼び込むことにより、建築が単一のオブジェクトではなく、人と人との関係やその営みを媒介する組織体となることを意図した。
路地の南北には木戸門のような門扉を設けてあり、この入口をくぐると間口二間の路地に向かいあう町屋のように各住戸がならんでいる。住戸は路地に向かって出入口を持つメゾネットを基本ユニットとしており、それを2つ積み重ねているため、アクセスフロアは地上と中間階に2つある。向かい合う住戸のガラスにいくつかのパターンを設けて視線を制御している。ガラスの透明度が高いアクセスフロアは簡単なキッチンを設けてあるだけのガランとした空間で、仕事をしながら2つのフロアを使い分けて暮らすような住まい方を想定している。それぞれ屋号を持つ小さな仕事場やお店がならぶ町屋の路地のような空間となることを意図した。
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section
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擁壁に手を加えず、崖上の平坦であった敷地に矩形のオブジェクトを置いていれば計画は単純だったのかもしれないが、デザインされたオブジェクトから関係性に主題を移すために制度上あえて困難な方法を選択した。工作物である擁壁に許される限りの開口を設けてスロープ状の貫通通路を通し、建築にヴォイドを穿つ。敷地形状からそれぞれ異なる場所が生まれ、同じプランの住戸は一つもない。存在しない中心のヴォイドが複雑で多様な空間をその周囲に呼び込んでいく。(工藤徹)
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GL plan
所在地 東京都渋谷区
用途 共同住宅 長屋
敷地面積 597.14m2
建築面積 371.93m2
延床面積 1519.40m2
階数 地下2階地上3階
構造 RC造
竣工 2024年2月
掲載 新建築2024年8月号